水の事故に遭遇した時のレスキュー法

泳ぎを覚えたから水辺へ行く。そんなときは、誰でも自分が災難に出くわすとは思ったりはしていません。しかし、そんな状況になる可能性は誰にでもあります。特に、泳ぎが楽しくなり、気が緩んできた時は要注意!
たとえ自分が溺れなくても他の人が危険に出くわすこともあります。
ここでは、水の危険に遭遇した時の最低限の知識を覚えておきましょう。

1.自分が溺れてはいけない。

<ポイント1>できれば水の中に入らない。
救われる側を考えれば、迅速、確実に救助されたいはず。救う側だって同じこと。ならば、ろくに救助法も知らないのに、泳げる、という理由だけで水に飛び込むのは、愚かなことだ。助かるはずの人を死なす事にもなりかねない。二人揃って命を落とす水事故も毎年ニュースなどで報告されている。
そこでいくつかの方法を以下に紹介する。

陸上からの方法・・・浮き輪を投げる、長い棒を差し出す、衣服をつないでロープの代わりにする、人が手をつなぐなど

<ポイント2>ボートやサーフボートで近づいたり、オールや浮き輪で救う。
溺者が岸から届かないところなら、ボートやサーフボードが役に立つ。けれどもやはり、できればオールや浮き輪などを使って救助するのが安全確実。サーフボードは裏返しにしておき、縁にもたれかけさせ、ボードを返してやれば溺者を簡単に乗せることができる。また、浮き輪は投げても受け取れない事が多い。一人が水に入り、泳いでそこまで運んでやり、しっかり掴まらせてやるのが現実的。

<ポイント3>溺れる者は、なんにでもしがみつく。できれば物を掴ませた方がいい。
溺れる者はワラをも掴む思いで必死である。なんにでもしがみつこうとする為、助けるつもりが身動きをとれなくなり、二人とも溺れてしまう、なんて話しになる。できるだけ救助者は水の中に入らず、陸上やボートからロープや棒を使って、というのはそんな理由もあるからだ。
どうしても水の中に入らなければならないなら、浮力のある物を持っていく。それに捕まらせておけばよい。安心するし、しがみつかれる事はない。

<ポイント4>やむを得ず素手で救助する場合、気付かれないように、後ろから助ける。
沖合いで溺れている。上記<ポイント2・3>にかかれた浮力物もない。そういう場面に出くわした時、泳力と体力の持ち主であるなら、素手で救助に行ってもいいだろう。ただし、しがみつかれない事を最優先すること。気付かれないように後ろから近づき、背後から溺者の顎に手をかけて、仰向けにするのが一般的。仕方なく前から行く時は、距離を置き潜って溺者へ近づく。そして、足を掴んで後ろ向きにしてしまう。後は同じだ。
ここで注意!子供の場合、泳ぎに自信があっても上記の救助は絶対にしてはならない。誰かの助けを呼びに行く方が最優先。

2.上手く近づき、水の中から引き上げる方法を知っておく。

<ポイント5>とにかくおとなしくさせる。助ける側の危険を察知したら殴ってでも少し離れ回り込む。
相手は死にかけているから救助者を思い切りしがみつく。となると、身動き取れなくなって助けるどころじゃない、心中してしまう。だから、少し乱暴になってもいいので、胸を突いたり、脚で蹴ったりして、一度溺者から離れる。まるで喧嘩みたいだけど、こっちだって死にたくない。隙をついて後ろに回り込み、仰向けにし、片手を顎から腋の下に通し、カエル足で戻る。

<ポイント6>溺れた人はぐったりしている。安全確実に陸に運ぼう。
水の中では相当暴れている為、かなりぐったりしているはず。もしかしたら、心臓が停止してしまったかもしれない。もし停止してしまっているなら、直ちに人工呼吸が必要だ。蘇生率は呼吸停止時間にほぼ反比例。だから海面に横に浮かし、息を吹き込んでみる。うまくいけばこっちのもの。上手くいかないようなら陸に運んで、そこで行う。

3.運んだだけでは終わらない、これからが本番。

<ポイント7>生死の判断基準を知識として知っておく。
生死の判断基準は、以下の通り。
①顔色が真っ青で、筋肉が緩み、弾力が失われている。
②呼吸をしていない。
③心臓が止まっている。
④瞳孔が開きっぱなし。
これらが全部揃うと絶望的だ。しかし、心臓が止まったくらいでは諦めてはいけない。人工呼吸し処置しやすい場所に運ぶ。

<ポイント8>心臓停止2分以内なら90%、4分以内でも50%の人が蘇生する。
人工呼吸は時間との戦い、早いほどいいと言われている。心臓が止まって2分以内なら90%の人が助かるのだ。モタモタしていられない。陸上に運ぶまでに貴重な時間がどんどん過ぎていく、蘇生率がどんどん落ちていく。すばやい救助がなによりだ、救助現場でも人工呼吸できるようになろう。気道確保がやりにくそうだが、ライフベストや浮き輪、サーフボードなどを使って、溺者や救助者が安定した姿勢をたもてれば、それほど難しいことではない。

<ポイント9>人工呼吸をする前に行う事がある。
溺れた場合は大抵肺や胃に水が入っているため、吐かせなければならない。そして、喉に異物が詰まっていたら取り除く。意識を失うと舌や顎、首の筋肉に力が入らないので舌根が落ちて気道を塞いでしまう。それだけでも呼吸はできないから気道を開いてやろう。頭を後ろに反らせ、顎が上を向くくらい喉を伸ばしてやれば、気道が開く。ただし、首に損傷を受けている場合はやってはいけない。

<ポイント10>5秒に1回のタイミングで大きくゆっくり吹き込む。
気道を確保しただけで呼吸が戻る場合もあるけれど、安心できない。息と脈を確認しながら救急車の到着を待つ。途中で呼吸が止まったり、気道確保しても呼吸が戻らない場合は、素早く人工呼吸。5秒に1回のリズムで大きく、ゆっくり息を吹き込む。息を吹き込んでも、胸が膨らまないのは、肺に空気が送られていない証拠。ちゃんと気道が開いているか、喉に異物が入っていないかを再確認しましょう。

<ポイント11>とにかく、脳に酸素と栄養を。心臓を強制的に動かし脳を目覚めさせる。
心臓が止まれば、まっさきに脳に障害が起きる。脳が機能しなくなると死となる。ならば強制的に脳に血液(酸素と栄養)を送って、声明を維持させよう。とはいえ、どんなに上手にマッサージができても、脳に供給できる血液は普段の30%程度、時間にすれば15~30分間しか脳を機能させられない。だから蘇生しても安心はできない。あくまで、救急車がやってくるまでのつなぎなのだ。しかし、そのつなぎが何より大切である。

<ポイント12>1分間に80~100回押す時間と力を抜く時間を同じに。
自分の肩が圧迫点の真上に来るように、肘はまっすぐ伸ばしたまま、自分の体重をかけ、相手の胸が4~5cm下がるまで押す。力を抜く時は、手を胸から離さない。手を離してしまうと、次に押すときに正しい位置からはずれるからだ。ただ、かけていた体重を抜くだけ。押す時間と抜く時間は同じ、リズミカルに1分間に80~100回(往復)がいい。人工呼吸と心臓マッサージを組み合わせれば、蘇生率は格段にあがるはず。